先日調律のご依頼をいただいてお邪魔したお宅での出来事です。
お宅を新築されご実家からグランドピアノを移動された際に
運送屋さんがハンマーを折ってしまったそうです。
そしてそのハンマーを交換したのですが、それがひどい
状態でした。ピアノの調律のご依頼をいただいた際に修理した
最高音の音が出ないと聞いていましたので実際に見てみると
まずハンマーの根元のハンマーシャンクとバットの連結部分の
センターピンにガタがあり弦にほとんど当たっていない
状態でした。初めにこのセンターピン交換をした図です。
一番の問題は他にあるのですが、先ずはバットとシャンクが
しっかりとした状態にしてみました。
通常ハンマーのシャンクを折ってしまった場合は、
ハンマーウッド部分は残してシャンクだけを交換するのが
普通です。そして新しいシャンクに元あったハンマーを
移植してそのまま使用します。
しかし、このハンマーは全然違うものが付けられて
しまっています。
色も全然違いますね。
先ほど一番の問題があると書きましたが、それがこれです!
シャンクの長さが足りていません。全然短いのです。
これだけ短いとハンマーと弦とが正常に当たっても
打弦点が違いますので、まともな音が出ません。
2mmくらいは足りないでしょうか。
たった2mmかもしれませんが、最高音の2mmの誤差
というのは致命的で音を出すのには無理があります。
まだシャンクが長ければハンマーを抜いて、正しい位置に
再接着をしたのち、シャンクを切ればいいのですが、
短いとどうしようもありません。シャンクを変えるしか
方法がありません。
シャンクの裏にあるローラーの位置も元からあるものと
違う位置にありますので、ジャックなどの調整も必要ですが
それももちろんされていません。
バットという部品も違うものに変えられていました。
お客様も最高音はほとんど使わないからとりあえず音が
鳴ればいいというご希望でしたので、いろいろ試して
なんとか弱弱しい音ではありますが、出るようになり、
調律もしてきました。
たまに、運送屋さんがハンマーシャンクを折ってしまうことが
あるのですが、それにしてもこの運送屋さんは不誠実な
対応をしてしまったようですね。その作業のあと、お客様が
最高音が鳴らないことを伝えると「調律をすれば鳴るように
なりますよ」と言われそんなものかと、そのままにして
しまったそうです。この運送屋さんはどこかからカワイの
グランドピアノの最高音のアッセンブリーを買ってきて、
とりあえずくっつけておいたということです。
お客様は2年前に引越しをされお子様もお生まれになり、
とてもピアノに構っていられない状態だったそうです。
さすがに2年前の作業に今からクレームをつける訳にもいかない
ので、もし直すとなるとお客様自身が費用をご負担しなければ
いけなくなってしまいます。
以前、うちのお客様で興味本位で自分でアクションを
引き出そうとしてシャンクを折ってしまい、セロテープを
巻いてとりあえずくっつけていた方もいらっしゃいました。
皆さんもくれぐれも気を付けてくださいね。
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